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日銀が利上げしてもマンション価格は下がらない?

2026.08.03

株高と新築供給の減少が支えるマンション市場

日本経済新聞の記事「マンションインフレ、日銀利上げでも継続か 株高で資金流入」では、日銀が政策金利を引き上げるなかでも、マンション価格は当面高止まりする可能性が高いと報じています。

一般に、金利が上がると住宅ローンの返済負担が増えるため、不動産価格には下落圧力がかかります。しかし、現在の日本のマンション市場では、金利上昇だけでは価格が大きく下がりにくい構造があるようです。

今回は、同記事の内容をもとに、マンション価格を支えている要因と、購入を検討する際の注意点を整理します。

利上げをすれば住宅価格が下がるとは限らない

海外の事例を見ると、中央銀行の利上げによって住宅価格が必ず下落するわけではありません。

コロナ禍後に欧州と米国が利上げを進めた際、ドイツやフランスでは住宅価格が下落しました。一方、米国では政策金利が大きく上昇したにもかかわらず、住宅価格は総じて上昇を続けました。

米国では、金利上昇によって一般層の住宅購入力が低下する一方、株高などで資産を増やした高所得者層の需要は比較的安定していました。また、金利上昇によって安価な住宅を供給する事業の採算が悪化し、新築住宅が増えにくくなったことも、価格を下支えしたと分析されています。

つまり、住宅の取引量が減少しても、供給不足や富裕層の需要によって、価格そのものは高止まりすることがあります。

日本の利上げによる価格抑制効果は限定的

日銀は政策金利を約1%まで引き上げました。31年ぶりの水準ではありますが、欧米の利上げ局面と比較すると、日本の金利は依然として低い水準です。利上げのペースも緩やかなため、マンション価格を大幅に押し下げる効果は限定的との見方が示されています。

特に東京都心の超高額マンションでは、住宅ローンを使わず、現金で購入するケースも少なくありません。こうした購入者は住宅ローン金利の影響を受けにくいため、利上げ後も高額物件の価格を支える存在となっています。

都心マンションには天井感も

もっとも、東京都心のマンション価格が今後も同じペースで上がり続けるとは限りません。東京都心6区の中古マンション価格は、2026年に入り、前月比で下落する月が目立ち始めています。

ただし、70平方メートル換算の平均価格は依然として1億8000万円台と非常に高く、現時点では大幅な値崩れが始まったとはいえない状況です。価格の上昇スピードには鈍化の兆しがあるものの、高値圏での推移は続いているといえるでしょう。

都心の高値が周辺エリアにも波及

都心6区のマンションが高額になりすぎると、一般の購入者は、都心6区以外の東京23区や首都圏の中核都市へ購入対象を広げます。その結果、周辺エリアにも需要が移り、需給が引き締まります。

都心の高額物件が現金購入者などに買い支えられ、その外側のエリアへ実需が移動することで、首都圏全体の平均価格も上昇しやすくなります。近畿圏でも、これに近い動きが確認されています。

一方で、都市圏から離れた利便性の低いマンションは、利上げの影響を受けやすいとされています。ただし、こうした物件は取引数自体が少なく、市場全体の平均価格を大幅に押し下げるほどの影響は限定的とみられています。

株高による資産効果がマンション購入を後押し

記事では、株式の値上がりによって金融資産が1億円を超えた50代会社員が、東京都心で約1億円のマンション購入を検討している事例が紹介されています。この購入者は、株式の一部を売却してマンション購入資金に充てる予定で、金利上昇は購入を中止する理由にはならないと話しています。購入の目的は、値上がりした株式に偏った資産構成を見直し、資産を分散することです。

株式よりも価格変動が小さく、一定のインフレ対策が期待できる資産として、都心の中古マンションが選ばれていることが分かります。また、不動産には相続税対策として購入される側面もあります。このように、利上げの影響を受けにくい購入者が一定数存在することも、マンション価格を支える要因になっています。

株価と中古マンション価格は連動する傾向

東京都23区の中古マンション価格と日経平均株価には、一定の時間差を置いて連動する傾向があるとされています。株価が上昇すると、株式を保有している人の金融資産が増え、その一部が不動産市場へ移動します。

ただし、最近の株高は一部の値がさ株がけん引している面もあり、すべての投資家や購入者に同じ資産効果が及ぶとは限りません。株価が上昇しているからといって、マンション価格が自動的に上がるわけではなく、株高の恩恵を受ける層の広がりも重要になります。

新築マンションの減少が中古価格を下支え

マンション価格を高止まりさせているもう一つの大きな要因が、新築マンションの供給減少です。2025年の全国の新築マンション供給戸数は5万9940戸となり、ピークだった1994年の約3分の1まで減少しました。人手不足などの構造的な要因によって、新築マンションの供給は簡単には増えにくい状況です。

新築の供給が減少すると、新築を購入できなかった需要が中古市場へ流れます。その結果、中古マンションの需給も引き締まり、条件の良い物件を中心に高値が維持されやすくなります。価格に天井感が見え始めても、供給不足によって、実際にはなかなか価格上昇が止まらない状態が続く可能性があります。

住宅ローン金利は3%まで想定する

マンション価格が高止まりする可能性がある一方で、購入者にとっては住宅ローン金利の上昇が大きなリスクになります。記事では、変動型住宅ローン金利が3%程度まで上昇した場合でも、返済を続けられるかを事前にシミュレーションする必要があると指摘されています。

現在の金利だけを前提に購入予算を決めるのではなく、将来の金利上昇を織り込んで返済可能額を判断することが重要です。また、購入後の値上がりを期待して、収入や貯蓄に対して無理のある物件を購入するリスクも高まっています。

今後は、マンションを購入すれば大きく値上がりするという前提ではなく、返済負担、資産価値、賃貸した場合の家賃水準などを総合的に確認する必要があります。

当社の見方

当社としても、今回の利上げによってマンション価格が直ちに大幅下落へ転じる可能性は低いと考えています。政策金利は上昇しているものの、金利水準自体は欧米と比較して低く、都心高額物件では現金購入者の比率も高いためです。

加えて、株高による資産効果と新築マンションの供給不足および建築コストの上昇が、都心および首都圏の中古マンション価格を下支えしています。

一方で、市場全体が一律に上昇する局面ではなくなりつつあります。都心立地、駅距離、管理状態、賃貸需要、希少性などによって、物件ごとの価格維持力には大きな差が生じると考えられます。

今後の不動産購入では、短期的な値上がりを前提とするのではなく、金利上昇後も保有を継続できるか、将来売却する際に十分な需要が見込めるかという視点が、これまで以上に重要になります。

まとめ

日銀の利上げは、マンション市場に一定の価格抑制効果を及ぼします。

しかし、株高による資金流入、都心高額物件の現金購入、新築マンションの供給減少などが価格を下支えしているため、首都圏を中心にマンション価格は当面高止まりする可能性があります。

ただし、価格には天井感も表れ始めており、今後、大幅な値上がりが期待できる物件は限定されるとみられます。

購入を検討する際には、将来の金利上昇を踏まえ、収入や貯蓄に見合った無理のない資金計画を立てることが重要です。

また、売却を検討している所有者にとっても、平均価格の動きだけで判断するのではなく、物件の立地、築年数、管理状態、流通性などを個別に確認する必要があります。

出典:日本経済新聞「マンションインフレ、日銀利上げでも継続か 株高で資金流入」